▶ナイフコーター導入による生産性・ニーズ対応力の向上
シバタセスコ㈱はこの程、同社の犬山工場へ新たにナイフコーターを導入。生産量の拡大と顧客ニーズへの対応力工場を図っている。高精度な塗工を施すためコーターに独自の改良を加えるとともに、長年培ってきたノウハウを生かして差別化を狙う。粘着剤の選定や扱いに長け、高付加価値な粘着製品を開発する同社の取り組みを取材した。
(大野)
シバタセスコは紙やフィルム、不織布といった幅広い素材への粘着塗工を行っている企業。両面刷りに対応したグラビアコーターを設備し、独自の塗工技術を活用して工業用テープをはじめ、文具、雑貨、医療分野の粘着製品などを手掛けている。材料の調達からカッティング、スリットなどの加工、高周波ウェルダーや超音波シーラーを用いた溶着、包装までを自社内で一貫して行う。
材料選定・温度設定など独自性で差別化
このほど導入したナイフコーターは、エマルジョン型と溶剤型の粘着剤に対応し、最大加工巾は1,300㎜。より多彩な顧客ニーズへ応えるための設備投資だと柴田社長は導入の経緯を話す。
「素材へ塗工する膜厚を常に一定で安定させる為、メーカーの方と相談しながら1年近くかけて調整を重ねた。当社ならではのポイントとして、コーターのヘッドを独自設計することにより、スジができずに広幅でも端から端まで粘着剤の厚みのバラつきを抑えた塗工を実現している」「ヘッドの稼働は手動ではなくポンプ制御となっており、数値を設定すれば、素材の厚みに応じて容易に調節が可能。今回の新設備導入によって、需要が多く高精度が求められる工業や医療分野のお客様からの要望に一層応えられるようになった」
導入間もないが、すでに全面塗工を施すなど生産用途で稼働しているという。同機は、ストックされた粘着剤の液面低下を検知し、自動で補給する自作の装置も備え、作業の省力化・効率化にも貢献している。
コーター扱うノウハウ 独自のデータ活用
コーター自体のカスタマイズに加えて、培ってきたノウハウを活用して高品質な粘着製品を製造する同社。被着体や使用環境に合わせて最適な素材と粘着剤の組み合わせを提案することはもちろん、塗工の際、粘着剤がゲル化して粒状になってしまうことを防ぐ為、粘着剤をろ過、循環するなどして対策する。種類ごとに異なる粘着剤の扱いは、オペレーターが蓄積してきた経験に頼るところが大きい。
また、塗工後の乾燥工程も同社ならではの知見を生かす。導入したナイフコーターの場合、粘着剤を塗られた素材は天井付近に設置された熱風方式の乾燥炉へ搬送される。
そこで素材への加熱を3段階へ分けることにより、粘着剤が発泡してしまう現象を防ぐ。続いて、熱で収縮した素材を超音波加湿器で冷却し、最後に貼り合わせを行うといった工程を経る。
こうした一連の作業における温度は、同社のノウハウを基に設定している。近年、一層要求が厳しくなる品質管理の基準を満たすため、検査装置による異物混入の確認も怠らない。
柴田社長は「粘着剤を扱うに当たって、ゲル化や乾燥時のトラブルといった課題は多く、一筋縄ではいかない。当社はオペレーターの目と手を頼りに長年培ってきたデータを生かし、最適な粘着剤の選定、各種加工、温度設定を行っている。また、製品の品質管理に加えて、作業現場と周辺への環境対策も欠かせない」と独自性を強調する。
現在は無溶剤型の粘着剤が主流となっているが、同社は溶剤への対策として、触媒式の脱臭装置も備える。特に犬山工場の近隣には医療設備が有り、安全性の維持は必須。乾燥炉の温度と併せて、管理を徹底している。
今後の展望について、柴田社長は「新設備を活用して生産量を拡大させるほか、お客さまへ塗工の提案を積極化していく。当社の手掛けている製品は依然として工業系の割合が高いが、パターンやグラデーション粘着塗工など、ご相談に応じてさまざまな塗工が出来、新たな粘着製品を生み出す余地がまだまだ残されているのではと考えている」と話す。
小ロットから塗工に応じるという同社は、今後も高付加価値なラベルの新提案、ユニークな製品開発を継続する。